Gibson / Victory MVⅡについてあまり知られていないので、詳しく調べた事を記載しておきます。
Gibsonが変わったシェイプのギターをバンバン製作していた70年後半から80年前半。
経営的にも苦かったこの時代にVictoryシリーズは誕生しました。
因みにVictory MVの『MV』とはMulti Voiceの略です。
この時代は音楽的にもメタルが台頭して来ており、ギターのシェアもトレモロが搭載されているストラトタイプに取られ、レスポールを復活させたばかりのGibsonには向かい風が吹いてました。
そんな折、自国の音楽であるカントリーに目をつけた訳ですが、取り分けこのジャンルもFenderがシェアを誇っていたため、それを打開すべく製作されたのがこのVictoryです。
VictoryシリーズにはMVⅡ、MVⅩ、BASSがあり、それぞれMVⅡはテレキャスター、MVⅩはストラトキャスター、BASSはプレシジョンベースの対抗馬として作られました。
特にこのシリーズは通してネック、ボディーにイースタン・ハードロックメイプルが使用されおり、重量を犠牲にしてでも過酷な環境・ステージにも耐えうるものとして選択された経緯があります。
ボディーシェイプはFenderを意識したダブルカッタウェイになっていますが、ギターの方はGibson伝統のセットネックが採用されたり、スケールが24 3/4になっていたりと、Gibsonらしさが細部に残っているのも特徴。
更にMVⅡとMVⅩは見た目こそあまり違いはありませんが、細かいところでは2点ほど差異があります。
1点目はピックアップ。
実際のピックアップもそれぞれに全く違うものが搭載されています。
MVⅡはフロント / Velvet Brick リア / Magna Ⅱ
MVⅩはフロント / Magna Plus センター / Super Stack リア / Magna Plus B
(よく間違えらてますが同ピックアップは同時期に製作されていたSonex Deluxeシリーズには全く搭載されていません。)
見た目はMVⅡがH-H、MVⅩがH-S-Hですが、実はMVⅩのセンターにはSuper Stackというハムバッカーが搭載されており、H-H-Hの配列なんですね。
もちろんコントロールはMVⅡが3way、MVⅩが5wayになってます。
2点目は指板。
MVⅡはローズウッド、MVⅩはエボニーが使用されています。
ここまで精力的に新しくVictoryシリーズを作製したGibsonですが、販売は真逆にひっそりとしたものでした。
当時のカタログにはほとんど掲載されておらず、専用のPOPも81年と82年の2つだけ。
また84年まで製作されていたものの、大部分の大量生産は1981年の下半期と1982年の第1四半期に限定されていたようです。
これはGibsonバイヤーからあまりにもFenderライクなVictoryが不評を買ったのが原因とされています。また実際の音も同社のRDに近いため、当時のFenderのファンからも見向きもされませんでした。(販売価格が高価だった為という噂も・・・)
ですが最近になりアメリカ本国でも80年代のギターが見直されつつあるので、この流れに乗って是非Victoryも再評価されて日の目を見てもらいたいものです。